ジュニアテニス選手の体力について(2001年〜2012年のデータから)

ジュニアテニス選手の体力について(2001年〜2012年のデータから)

テニスフォーラムでは日本のジュニアテニス選手に対して体力測定を実施し、これを基にした体力トレーニングを啓蒙してきました。
ここでは、2001年から実施されているトップジュニア選手を対象とした体力測定結果を基に、最近のジュニア選手の体力的特徴を考察してみようと思います。
2001年から2012年のうち、2001年、2005年、2012年を以下に比較してみました。
 

測定対象となったのは、日本テニス協会・ジュニア育成事業において、各都道府県で強化指定された選手 : 計320名です。

以下のように、強化指定された選手は各年で年齢等の構成が異なりますが、ここでは各都道府県において強化指定されるトップジュニア選手の体力的特徴として評価していくことにします。
 測定年 N数 年齢[歳]
2001年男子
2001年女子
70
65
14.3±1.6
13.8±1.6
2005年男子
2005年女子
25
28
13.8±1.4
13.3±1.4
2012年男子
2012年女子
69
63
12.9±1.7
13.6±2.4
測定種目と方法
■握力,上体起こし,立ち幅跳び: 文部科学省『新体力テスト』に準じた.
■長座位体前屈: 日本テニス協会の方法による.長座位にて前屈させ,指尖と足関節90度状態での足指の距離を計測した.■10m走: 10m区間の全力走.光電管計測装置を用い,静止状態から10m地点までの疾走タイムを測定した.■コート往復走: コートのエンドライン間(23.78 m)を,全力疾走で往復する時間を計測した.光電管計測装置を用い,静止状態からスタートさせ,往復地点のマーカーに触れて折り返させた.

■5方向走: 日本テニス協会の方法による敏捷性テスト.センターマークからスタートし,両側のシングルスサイドライン,およびシングルスサイドラインとサービスラインの交点,センターサービスラインとサービスラインの交点,計5箇所を折り返す課題に要する時間を計測した.

■メディシンボール投げ: 2kgのメディシンボールを使用し,助走はさせずにサッカーのスローイング動作のようにして正面に向けてできるだけ遠くへ投げるよう指示した.投球位置から落下地点までの距離を計測した.

■3分間シャトルスタミナ: 心肺持久力を評価するため,金子ら(2005)が示し,日本テニス協会が用いている方法に準じた.10m区間を3分間往復させ続け,その総距離を計測した.

2001年は青いバー,2005年は赤いバー,2012年は緑のバーで示しています.
科学的解釈を施すために,統計処理として一元配置分散分析の後,Tukey-Kramer法にて多重比較検定を行っています.
*:p<0.05 v.s. 2001

†:p<0.05 v.s. 2005

体格

体格が大きく変化している様子はありません.
体重は2012年において2001年よりも軽くなっていますが,これは2012年の強化指定選手たちの年齢が低いことも影響していると考えられます.
ただ,身長はそれほど低くはないことから,高身長で細身の体格になっている可能性がうかがえます.

基礎体力
学校等でも行われている体力テストにも採用されている基礎体力の測定結果です.
2012年は軒並み低くなっていることが分かります.

専門的体力
テニス選手用に考案されたテスト項目の結果も,年によって成績が異なります.
10m走やコート往復走といった非常に短い距離のダッシュ力は優れていますが,5方向走や3分間シャトルスタミナといった持久性を伴う走力は横ばい,もしくは低下にあります.
また,メディシンボール投げについては明らかな低下を示しています.

まとめ
近年のトップジュニア選手は,力強さやスタミナといった点について,基礎的なテスト方法による体力が低下傾向にあるようです.
その一方で,非常に短い距離のダッシュ力は優れています

このような現在のジュニア選手の体力的特徴は,指導方針や競技スタイルの変遷によるものである可能性が考えられますが,これについてはより詳細な研究を進めていかなければいけません.

出典元:「日本の一流ジュニアテニス選手の体力的特徴—2001年~2012年に実施された体力調査結果による分析—」第64回日本体育学会予稿集(2013)
著者:今西 平 , 出井 章雅 , 鈴木 奈都美 , 岡西 康法 , 尾崎 貴汎 , 梅林 薫